【コラム】ハイチ地震から1年-被災地の水事情 国境なき医師団(MSF)

[ 2011/01/12 ]


※当記事は非営利で国際的な医療や人道援助を行う民間団体「国境なき医師団(MSF)」様よりご提供いただいています。

2010年1月12日に起きた大地震によって300万人以上が被災したハイチでは、地震発生から1年を迎えました。しかし、現在でも推定で81万人の被災者がテントでの避難生活を送っています。さらに、2010年10月下旬から国内で感染が広がったコレラによって、これまでに3千人以上の死者が出ました国境なき医師団(MSF)は地震発生直後から緊急の医療ケアや清潔な水の提供、衛生環境の整備などを開始し、また同時にコレラ感染への対応も継続して行っています。今回は、地震とコレラに見舞われたハイチの水事情をご紹介します。


ハイチ

シテ・ソレイユで水・衛生活動を行うMSFの水・衛生専門家、カテリーヌ・ヴァン・エイク 


貧困下の人びとを直撃した大地震とコレラ

地震発生以前より、ハイチの人びとの多くは貧困下で生活し、国民全体の70%以上が1日2米ドル(約160円)以下で暮らしているとされています。このため、国民の約4分の3に当たる人びとが医療費を払うことができず、元々十分な医療を受けられない状況にありました。大地震やコレラの流行拡大によって人びとはさらに脆弱な立場に置かれ、医療ケアや清潔な水などが大幅に不足する事態になりました。地震発生から1年が経過した現在でも、ハイチの人びとが必要としている医療ケアのニーズと、実際に人びとが受けられる医療には大きな隔たりが存在し、特に緊急の産科・外科医療や小児医療を中心とする専門医療を受けられる手段が不足しています。


コレラ流行にも見舞われた被災地の水事情

医療ケアの不足にくわえて、ハイチでは地震の発生前から清潔な水を入手できる人も限られていました。米疾病予防センター(CDC)の報告によると、塩素処理された清潔な水道水を手に入れることが出来るのは、地震前でもハイチの総人口980万人のうちわずか12%であったとされています。首都ポルトープランスでは、多くの人びとは水を公共の井戸から汲むか、あるいは水の販売業者から購入することで生活に必要な水を入手しています。ポルトープランスの避難キャンプでも、多くの人びとが清潔な水を得る手段を人道援助団体に頼っています。

地震とコレラによる大きな被害を受けたポルトープランスのスラム地区シテ・ソレイユでは、水道設備や衛生設備がほとんど整備されていませんでした。このため、コレラ発生から10日が経過した後も、この地域に住む人びとは塩素消毒された清潔な水を入手することが出来ていませんでした。MSFのチームがシテ・ソレイユの水・衛生状況の調査を行った結果、この地域の給水所の水が塩素消毒されていないため清潔な水が大幅に不足しており、また人びとが必ずしもトイレを使用していないため衛生状況も劣悪であることが判明しました。これを受けて、MSFの水・衛生専門チームはこの地域の水を塩素消毒し、同時に清潔な水の提供を開始しました。シテ・ソレイユでは30万リットルの水を毎日1万5千人以上に提供しています。

水の配給にくわえて、MSFは水源の水質検査も実施しています。MSFの水・衛生専門家のカテリーヌ・ヴァン・エイクは、シテ・ソレイユで公共や私有の井戸の水質を検査しています。水の汚染を予防するため、水に塩素が適切に加えられているどうかの調査を行いますが、水が安全ではないと判明することは度々あります。このため、コレラの感染を未然に防ぐために、住民に対して水に塩素を加える適切な方法も説明しています。


ハイチ

シテ・ソレイユの水は安全でないことが多いため、MSFの水・衛生専門家は塩素を加える方法を住民に説明する 


ヴァン・エイクは、シテ・ソレイユの水や衛生状況について次のように話します。

「当初はポルトープランスなどの人が密集した避難キャンプでコレラ感染が拡大すると見られていましたが、実際にはシテ・ソレイユのような地域で特に警戒が必要です。避難キャンプでは水は塩素消毒され、トイレなどの衛生設備も整っています。しかし、他の近隣地区の衛生状況は整っておらず、水は塩素消毒されていません。このため、キャンプの近隣地区でのコレラ感染拡大が特に問題です。」ヴァン・エイクと彼女のチームは、シテ・ソレイユでコレラの予防法や発症した場合の対処法を記したパンフレットの配布も行っています。

しかし、MSFが配給する塩素消毒がされた清潔な水やコレラの予防法についての情報も、それを必要としている全ての人には届いておらず、さらなる取り組みが必要です。MSFは昨年11月、より多くの援助団体が清潔な水の提供と衛生環境の整備に取り組むよう呼びかけました。大地震から1年を迎えたハイチでは、現在でも終息が見えないコレラの感染が続いています。無料の医療ケアや、住民へのコレラ感染予防についての説明、そして清潔な水の確保が現在でも緊急に求められています。


URN: 60838

地震の被災者の多くは今でもテント生活を送っており、元の家には戻ることができていない


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