【コラム】避難民キャンプに清潔な水を-日本人ロジスティシャンの活動から 国境なき医師団(MSF)

[ 2011/04/12 ]


※当記事は非営利で国際的な医療や人道援助を行う民間団体「国境なき医師団(MSF)」様よりご提供いただいています。

ある日、突然に襲撃がはじまり、着の身着のまま避難した先では、ラジオ放送が自分の死を報じている-これは、コンゴ民主共和国で活動する国境なき医師団(MSF)のチームが、実際に避難民となった人から聞いた話です。2009年、MSFが援助活動を開始するきっかけとなった出来事のなかで最も大きな割合を占めていたのは、「武力紛争」でした。MSFは、一夜にして生活の全てを失い、人口過密な国内避難民キャンプで不自由な生活を送る人びとに、医療ケアだけではなく、清潔な水を提供する活動も行っています。

国境なき医師団(MSF)

スーダン・ザリンゲイの国内避難民キャンプで、地域のリーダーと。 2007年、スーダンにて撮影。
Image from 国境なき医師団(MSF)

スーダンは、エジプトの下に位置し、エチオピアとチャドの間にある、アフリカ大陸最大の国です。スーダン西部のダルフール地域では、2000年前半から紛争が激化し、国連の推計では200万人以上の人びとが家を追われて国内避難民となりました。

スーダンの国内避難民キャンプで活動を行った小口ロジスティシャンは、過去の活動を振りかえり、こう語ります。

「2007年にザリンゲイという場所の国内避難民キャンプで活動したのですが、10トンぐらいの大きな水のタンクが3つあり、飲み水やシャワー、医療施設で使用されていました。」

タンクにためる水は、近くにあるワディ川から調達し、飲料水用として使用できるよう消毒してからタンクに貯蔵していました。しかし、ザリンゲイは砂漠地帯であるため、乾季になると水が干上がり、水脈は砂の中に隠れてしまいます。小口ロジスティシャンは現地スタッフらと力をあわせて、この水を、ウェル・ジェッティングという方法でくみ上げていました。

「細長いパイプの先にモーターポンプがつながっている、L字型の専用機具があるのですが、このパイプ部分を砂の奥深くに差し込みます。その後、少し離れた砂の上に穴を掘り、パイプから伸びる吐水ホースと、モーターポンプから出ている給水ホースを設置し、すこし水を入れておきます。モーターポンプを動かすと、砂の中にある水脈から吸い上げられた水がパイプとホースの中を循環し、水圧でどんどん水が掘った穴の中に溜まる仕組みになっています。」

人口が過密な避難民キャンプでは、衛生状態を清潔に保つことで、多くの病気の発症を未然に防ぐことができます。最低でも、一日に一人当たり15から20リットルの水が必要とされ、避難民キャンプでは、清潔な水の確保は非常に重要です。

小口ロジスティシャンは、MSFで活動を始める前、ロンドン大学の大学院で公衆衛生学を学んでいましたが、実際に現地で活動してみると、その重要性に気づいたといいます。

「清潔な環境や水が確保できないと、下痢やマラリアなど、治療できる病気で多くの人の命が失われてしまいます。ザリンゲイのキャンプでの活動を通じて、清潔な水を確保することがどれだけ大切かということを、身をもって体験しました。」

つづく

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