【コラム】ソマリア、情勢不安や干ばつなどで栄養失調が危機的状況に~国境なき医師団(MSF)~

[ 2011/08/22 ]


※当記事は、非営利で国際的な医療や人道援助を行う民間団体「国境なき医師団(MSF)」様よりご提供頂いております。
(参考:【コラム】続・避難民キャンプに清潔な水を~日本人ロジスティシャンの活動から~国境なき医師団(MSF)

20年以上もの間、内戦により事実上の無政府状態が続き、国民の約7割が、清潔な水さえ得られないまま生活している国、ソマリア。平均余命も短く、この国の人びとは、26歳を過ぎると人生の折り返し地点に立つことになります。

国連の推計によると、ソマリアでは5人に1人の子どもが5歳の誕生日を迎えることなく命を落とし、暫定政府軍と反政府勢力の間で繰り返される激しい戦闘では、毎年多くの人びとが犠牲となっています。さらに、昨年末ごろから事態が深刻化している干ばつと食糧価格高騰のあおりを受け、現在、ソマリアでは多くの子どもたちが栄養失調という病気に苦しんでいます。

栄養失調は悪化すると、ひどい下痢を起こすことがあります。体の小さな乳幼児の場合、至急水分補給を行い、脱水症状を緩和させないと命にかかわる一大事ですが、医療はもとより、清潔な飲料水が不足しているソマリアでは、家庭で簡単な処置を行うことさえ困難です。ましてや、治安が不安定なソマリアで活動できる援助団体の数は非常に少なく、最低限の援助すら受けられずに、命を落とす子どもたちが後を絶ちません。

現在、ソマリア各地では、多くの親が子どもたちを連れ、干ばつの打撃を受けた故郷を後にしています。隣国のケニアやエチオピアへ庇護(ひご)を求めて、徒歩で数百キロもの距離を移動する人びともいます。

国境なき医師団(MSF)は1991年からソマリアで活動しており、現在は1400人以上の現地スタッフが、8つの地域で医療のほか、物資と清潔な水を無償で人びとに提供しています。ケニアとの国境に近い、南部の町マレレで活動している、MSFのアシスタント・プログラム・コーディネーターのモハメド・ソマネ・アブディは、この地域へ逃げてきた人びとの状況をこう語ります。

「避難してきた人びとと話したときに、あまりに栄養失調がひどく衰弱して歩けなくなった子どもを、道端に置き去りにせざるを得なかったという話を何度も耳にしました。いま彼らの助けになれるのはMSFだけです。この地域で人びとを助けている団体や機関はほかにないからです」

栄養失調は、特に生後半年から2歳までの子どもがかかりやすい病気です。成長の著しい乳幼児は吸収しやすいミルクなど動物性のタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラル等の、正常な発育のために不可欠な栄養素を摂取しなくてはなりません。仮に、空腹感を満たす量を食べることができたとしても、毎日同じ物ばかりを食べ続けた場合、必要な栄養素が窮乏し、栄養失調にかかってしまいます。

一方で、栄養失調は予防も治療も可能で、適切な治療を行えば非常に治癒率の高い病気です。ある日、マレレにあるMSFの病院に、ひどい栄養失調のために体がむくんで腫れあがり、皮膚の大半がひびわれてしまった、1歳の男の子がやってきました。160km離れたディンソールの町から一緒にやってきた母親は、望みを失いかけていましたが、4週間にわたる治療を経て、男児は健康を取り戻し、元気になりました。

アブディは、こう説明します。

「男児の母親は、他の親と同じように、舞い上がるほど喜んでいます。でも、このような経験をしているのは、この子1人ではありません。毎日、同じような症例の患者があまりにも多く、私も全員の名前は思い出せないほどです」

治安が不安定な場所でも、より多くの人びとへ分け隔てなく援助を届けるため、MSFは、ソマリアでの活動において、政府やその他の機関からの資金援助を一切受けていません。人びとの命を救う現地での活動は、すべて民間からの寄付で支えられています。

Africa

アフリカ・ソマリア南部のマレレにある国境なき医師団(MSF)の施設に避難してきた母子。2011年6月撮影。

(※写真をクリックすると、国境なき医師団(MSF)の速報ページ、「ソマリアおよびケニア、エチオピア:内戦、医療・人道援助の不足、食糧高騰による人道的危機」をご覧いただけます。)

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