パキスタン、過去数十年で最悪の洪水被害の中、ダム建設プロジェクト再開を表明 水資源の利用をめぐり国内外で激しい議論へ

[ 2010/08/14 ]


パキスタンでは、過去数十年で最悪の洪水被害に見舞われている。この洪水被害が、これまで軋轢(あつれき)を生んできたカラバーグ・ダム建設プロジェクトめぐる議論を再燃させている。パキスタンユサフ・ラザ・ギラニ首相は8月9日、国内の報道機関に対して、政治的合意が形成されれば、 40年間棚上げ状態にあるインダス水系における、カラバーグ・ダム建設プロジェクトパンジャブ州)を再開させる意向を明らかにした。

カラバーグ・ダム建設プロジェクトは、水資源の利用をめぐり国内外で激しい議論を引き起こすことが予想される。それにより、ダム建設問題が政治問題に発展する可能性がある。カラバーグ・ダム建設プロジェクトは、ダム下流地域からの反対を受けて、繰り返し延 期されてきた。パキスタンの州として最も裕福で政治力の強いパンジャブ州に、水資源に対する過度の支配力を与える警戒感からだ。一方で、パンジャブ州南部の土地所有者からは、干ばつ時にダムの貯水確保が優先されることを警戒することから、カラバーグ・ダム建設プロジェクトに対する反対の声が上がっている。

パキスタン政府としては、インドによるインダス水系上流付近での巨大ダム建設を阻止したいとの意向があるようだ。パキスタンは、インドによるインダス水系上流のジャンム・カシミール州のダム建設計画は、1960年代に両国間で交わされたインダス水系水資源の利用を規制する「インダス水条約」に違反するものだと主張している。

パキスタンは、ダム建設によって、インドパキスタンへの水流を規制できるようになり、干ばつと洪水の両災害が悪化することを懸念している。一方、 イン ドは、ダムによってパキスタンへの水流が変化することはないと主張している。

カラバーグ・ダム建設プロジェクト擁護派の水利電力開発公社(WPDA)の元トップ、サムスル・ムルク氏は「今回のような大災害は防げたはずだ。カラバーク・ダムが建設されていれば、貯水池によって河川のはん濫は緩和されていたはずだ」と述べている。続けて、パキスタンでは、インダス水系につながるヒマラヤの氷河が溶け出す雨期は、国内の水系の流量が、わずか70日間で年間流量の4分の3に達すると述べる。そのため、1960年代に建設されたタルベラマングルの両主要ダムだけでは、インダス水系の水流を制御するには不十分だと指摘している。

カラバーグ・ダム建設プロジェクトをめぐる議論の再燃と共に、過去2週間の洪水被害への対応をめぐる批判もさらに高まっている。被害はパキスタン北部で発生し、その後インダス川に沿って南部へと拡大を続け、これまでの死亡者数は推計1500人に達している。

アシフ・アリ・ザルダリ大統領は8月10日、仏英訪問を終えパキスタンに帰国した。洪水被害に見舞われている中の大統領不在に対し、メディアや野党から厳 しい批判の声が上がっている。ユサフ・ラザ・ギラニ首相は政府トップとして救済活動を指揮しているのは自分だと述べ、批判に対応した。国連によると、洪水による被害者数は1300万人に上る。30万棟もの家屋に打撃が及び、小麦や米などの農作物への被害で約600万人が食糧不足に見舞われる可能性があるとしている。



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