アジアの大河で、水資源争奪戦? 中国のダム開発、インド、タイなど流域国と対立

[ 2010/08/16 ]


チベットからインドバングラデシュに流れるブラマプトラ川。この国境をまたぐアジアの大河で、水資源争奪戦が発生しそうな気配だ。「ブラマプトラ川上流で中国がダムを建設中」とインド紙が1面トップで報じたのは、2009年10月。このダムの建設が人工衛星で着工が確認された。

中国は、5基のダム建設計画が進んでいることを認めた。ただし、水力発電用のダムであり、常時放水するため下流域の水源に影響はないと説明している。

しかし、中国の思惑で下流域の水量をコントロールされてしまう可能性があるとインドは警戒感を高める。中国インドは、1962年に中印国境紛争を起しているのだからインドの警戒感も理解できる。インド国内の研究者からは「中国が水という武器を手にした」という論調も出てきた。また、インドの警戒感はダム建設にとどまらない。インド国内では「「中国はブラマプトラ川の水を、自国へ引き込もうとしているのではないか」という指摘もでている。

この指摘の根拠は、中国が進める「南水北調」計画だ。水資源の豊かな中国南部の水資源を、水不足の北部に送る計画だ。現状では国内河川から取水するとしている。しかし、国外を流れる河川からも取水する案がくすぶる状況でもある。そうなれば水資源が奪われる、とインド側は警戒している。

英国国防省の2007年の報告書も水問題は、軍事行動や人口移動を誘発する可能性を高める。中国ブラマプトラ川の流れを変えようとすれば、リスクは大きい」とこの問題を取り上げている。

中国インドは、雨期に水利情報を交換する覚書を結んでいるが、インド外務省では、ブラマプトラ川の開発問題を協議するため、河川協定も必要になると語っている。

中国インドのような構図は、アジア各地に見て取れる。メコン川は過去50年で最低の水位を観測。流域国であるタイベトナムは農業や漁業などに被害を受けた。タイ国内では、メコン川の水位の低さを中国のダム建設によるものだとする非難の声が多い。同じチベットから流れるタンルウィン川は、ダムが少ないから水位が高いと主張する。

実際にメコン川上流の中国雲南省では、国内の電力需要をまかなうため、巨大ダムの建設ラッシュが続いている。茶の産地として有名なプーアル市では、大型の原発5基分にあたる550万キロワットの水力発電ダムの工事が進む。糯扎渡(ヌオツァートゥー)ダムの貯水量は、日本一の徳山ダム(岐阜県)の30倍以上。流域最大の発電所になる。

これを含めて15のダムをつくる計画で、10年後の総発電容量は2500万キロワット。世界一の三峡ダムを上回る。国境をまたぎ流れる河の水資源争奪戦は、アジアの安全保障の課題になりつつある。


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