【コラム】ハイチで猛威を振るうコレラ 国境なき医師団(MSF)

[ 2010/11/27 ]


※当記事は非営利で国際的な医療や人道援助を行う民間団体「国境なき医師団(MSF)」様よりご提供いただいています。

コレラの感染拡大が深刻化するハイチ
1月に大地震が襲ったカリブ海の島国ハイチでは、コレラの感染拡大が続いています。政府の推計によると、これまでにおよそ5万人の人びとがコレラの治療を受けているとみられ、2万人以上がコレラの発症に苦しんでいるなか、死者は1100人を突破しています。コレラはハイチの風土病ではないため、現地の人びとは非常に感染力の強いこの病気を恐れ、混乱が広がっています。しかし、コレラは19世紀にコッホが発見したような古い病気で、予防や治療法はすでに確立されています。震災後、急速に衛生状態が悪化している現地で正しい水と衛生の知識をひろく伝え、早期に患者の治療を開始できれば、通常2日以内に回復し退院することができるのです。

国境なき医師団(MSF)では、震災前の1991年からハイチで医療援助活動を続けています。10月22日から11月14日までの間に、およそ1000人の現地スタッフと約150人の外国人スタッフを動員し、20ヵ所以上のコレラ治療センターで1万9500人を上回る患者を治療しています。

Central America

コレラ治療センターで輸液治療を受ける少女


コレラってどんな病気?
ところで、いったいコレラとはどんな病気なのでしょうか。この病気は、コレラ菌に汚染された水や食べ物から感染が広がり、数日の潜伏期間を経た後に突然激しい下痢や嘔吐の症状が現れます。コレラ菌は体内に入ると毒素を排出しますが、この影響で腸は浮腫を起こして機能しなくなります。その結果、腸で集まった大量の水を処理できなくなることから、細胞内の水と電解質の放出がはじまり、短時間のうちに極度の脱水症状が進行します。

腹痛や発熱がなく、衰弱するまで病院に行くのが遅れてしまうケースも多々みられます。43歳の男性、ジュリアンは、症状に襲われてから12時間以内にMSFの治療センターに運び込まれましたが、すでに衰弱して立つこともままならず、話すことさえ難しい状態でした。

「ちょうど家を出かける支度をしていたときに、突然嘔吐が始まりましたが、治るだろうと思っていたんです。でもどんどんひどくなり、トイレから動くことができなくなってしまいました」

Central America

ポルトープランス市で治療を受けるコレラ患者


コレラの治療は、脱水症状の改善が鍵
コレラの治療を行わずに放置した場合、脱水から皮膚はしわだらけになり、老人のように頬がこけ、血圧低下や虚脱から死に至ります。

その反面、重篤な脱水症状を防ぐという極めて簡単な治療法で、多くの命を助けることが可能です。特に、5歳以上の下痢症を患う患者から、コレラ独特の米のとぎ汁のような吐瀉物や排泄物が確認された場合、すぐにコレラと同じ治療を行うことが大切です。まず、無水グルコース、無水クエン酸三ナトリウム、塩化ナトリウムと塩化カリウムを主成分と した経口補水塩のパッケージを清潔な水に希釈して経口補水液を準備します。これをコレラ治療施設や軽度の患者を集めた補水治療ポイントに用意し、経口摂取が可能な患者へ継続的に投与することで脱水症状を緩和させます。より重症の患者はコレラの治療施設へと即時移送し、乳酸リンゲル液の点滴で脱水を食い止め、症状が安定するまで入院のうえ経過を観察します。

Central America

コレラ治療センター内に設置された、経口補水液の補給ポイント


衛生環境の改善で感染拡大は防止できる
コレラの猛威に終止符を打つためには、衛生環境の改善が急務です。コレラの治療施設では、出入りする人すべてに塩素を散布し、消毒を行います。手指や衣服、吐瀉物の消毒など、それぞれ用途別に濃度の違う3段階の塩素消毒液を用意することも重要です。

地震の避難民が暮らすキャンプやスラム地区などでは、塩素消毒された水と石けんの配布が必要とされており、簡易便所の設置と廃棄物の定期的な回収は、更なる感染拡大の防止には欠かすことができません。

Central America

2%の塩素消毒液でバケツを洗うスタッフ


インフォメーション
国境なき医師団(MSF)の活動について知ってください>
メディアで報じられることのないニュース、現場の今を毎日お伝えしています。 MSFのホームページはこちらからご閲覧ください。

ハイチ緊急援助をご支援下さい>
ハイチでコレラ渦に苦しむ人びとの命は、皆様からのご支援で救うことができます。 詳細はこちらから

ニュースレター、メールマガジンのお申し込み>
紙面版ニュースレター「REACT」(1年間無料)と、メールマガジンをぜひご購読ください。お申し込みはこちらから

過去1年分の「REACT」バックナンバーは、ウェブサイトからご覧いただくことも可能です。ご閲覧はこちらから


※当記事は非営利で国際的な医療や人道援助を行う民間団体「国境なき医師団(MSF)」様よりご提供いただいています。


関連する記事

アーカイブス

国土交通省「ダムを見に行こう(秋号)」発刊

国土交通省は9月、平成25年6月以降第23回目となる「ダムを見に行こう(秋号)」を発刊した。 (参照:東北整備 [&he・・・

記事全文

滋賀 茨城ほか3県で「湖沼水環境保全に関する自治体連携」設立 世界湖沼会議で

滋賀県や茨城県を含む5県で水環境保全のため「湖沼水環境保全に関する自治体連携」を設立、世界湖沼会議で発表予定 [&he・・・

記事全文

長野原町役場、八ッ場ダム建設で消えゆく町の景色を動画とフリー素材で後世へ

長野原町役場、ジモフルやぱくたそと提携し、八ッ場ダム建設で消える町の姿を動画とフリー素材で後世へ残す (参照: [&he・・・

記事全文

JAXA、はやぶさ2「リュウグウ」にロボット投下を発表 水の存在を探る

JAXA、探査機はやぶさ2が小惑星「リュウグウ」に小型着陸機MASCOTを投下したことを発表。「リュウグウ」で [&he・・・

記事全文

ソニー、水中でも音楽が楽しめるワイヤレスイヤホン「WF-SP900」を発売

ソニーが水中でも音楽が楽しめる防水防じん機能搭載のワイヤレスイヤホンを「WF-SP900」10月27日に発売す [&he・・・

記事全文

全清飲、清涼飲料水の賞味期限表示を年月表示へ自主ガイドライン策定

2018年9月27日、全清飲が清涼飲料水の賞味期限表示を従来の年月日表示から年月表示へ切り替える自主ガイドライ [&he・・・

記事全文

現代につながる江戸時代からの上水

かつて世界最大の都市であった江戸から現代の東京に受け継がれている上水 (参照:東京都水道局、「東京水」のデザイ [&he・・・

記事全文

炭酸水・強炭酸の人気は定着化のきざし

炭酸水・強炭酸飲料は一過性のブームに留まらず、日常生活に溶け込みつつある。 (参照:サントリー食品インターナシ [&he・・・

記事全文

大阪の水族館「海遊館」 海水運搬船の座礁で海水供給ストップ

大阪の水族館「海遊館」、海水運搬船が座礁したため海水の供給がストップし人工海水で飼育 (参照:福島第一原発、台 [&he・・・

記事全文

水道水を充填したペットボトル水のモンドセレクション受賞が盛んに

日本の各水道事業体が発売しているペットボトル水が好評価を得ている。 (参照:日本の名水百選)[ 2018/10/11 ]

記事全文

ニュース一覧を見る


    PR